単に不等式の証明をするだけなら不要。($1+t\le e^t$ など)
最大値・最小値を求める場合は必要なこともあるかもね。
例えば、「 $x, y \gt 0$ のとき $(x + y)\left(\dfrac{1}{x} + \dfrac{4}{y}\right) \ge 8$ を示せ。」という問題があったとき、以下の解法は妥当である。
$x,y,\dfrac{1}{x}, \dfrac{4}{y}$ はすべて正であるから、相加・相乗平均の関係より、
\[\dfrac{x + y}{2} \ge \sqrt{xy}, \dfrac{1}{2}\left(\dfrac{1}{x} + \dfrac{4}{y}\right) \ge \sqrt{\dfrac{1}{x} \cdot \dfrac{4}{y}} = \dfrac{2}{\sqrt{xy}}\]これから、
\[x + y \ge 2\sqrt{xy}, \dfrac{1}{x} + \dfrac{4}{y} \ge \dfrac{4}{\sqrt{xy}}\]がいえるので、両方とも両辺が正であることに注意すると、左辺同士と右辺同士を掛けて
\[(x + y)\left(\dfrac{1}{x} + \dfrac{4}{y}\right) \ge 8\]を得る。 Qed.
これの「等号成立条件」を考えると、 $x = y \land \dfrac{1}{x} = \dfrac{4}{y}$ だが、そのような $x,y$ は存在しない。それにもかかわらず、普通の数学においてはこの不等式は正しいとみなされる。
数学というのはそういうルールなのでそれに順応するしかない。仮に $\ge 8$ というのが「8 という値を取り得る必要がある」という意味だったら、数学はもっと複雑怪奇になってしまい手に負えなくなる。
ここで、最大値・最小値の定義を振り返ろう。集合 $S$ の最小値が $x$ であるというのは、以下の 2 つを同時に満たすことだ。
上の例において、「$x, y \gt 0$ のとき $(x + y)\left(\dfrac{1}{x} + \dfrac{4}{y}\right)$ の最小値を求めよ」という問題だったならば、仮に最小値が 8 であることを証明するのであれば示すべきことは 2 つある。
$S$ を、$(x + y)\left(\dfrac{1}{x} + \dfrac{4}{y}\right)$ が取り得る値の集合としよう。これは $S = \lbrace k \mid \exists x \gt 0. \exists y \gt 0 . k = (x + y)\left(\dfrac{1}{x} + \dfrac{4}{y}\right) \rbrace$ というふうに書ける。
2番目は上で示したことだが、1番目は成り立たない。よって最小値は8ではない。
$(x + y)\left(\dfrac{1}{x} + \dfrac{4}{y}\right) \ge 8$ (真) と、「$(x + y)\left(\dfrac{1}{x} + \dfrac{4}{y}\right)$ の最小値は 8 である」 (偽) の区別をすることは、数学の理解・不等式の理解において極めて重要だ。
「≧の証明だから、=になる場合があることを示さないと減点なのは妥当」という認識は誤っています。
勘違いされているのは、最小値を求める問題でA≧2であることを相加相乗平均などを用いて証明したときに、Aの最小値が2であることを示すには等号が成立する場合が実際になければ最小値は2にならないので、最小値が2であることを証明する場合には等号成立条件を示すのは必須ですが、単にA≧2を証明するだけの問題なら等号成立条件を示す必要はありません。
デマ「等号つき不等式の証明では等号成立条件を書かないと減点」はよく見ます。もちろん、大学入試に関してはデマです。