すべての正の実数$x, y$に対し
\[\sqrt{x}+\sqrt{y} \leqq k\sqrt{2x+y}\]が成り立つような実数$k$の最小値を求めよ.
コーシー・シュヴァルツの不等式を使いたくなる。使うとしたら $\begin{pmatrix} \dfrac{1}{\sqrt{2}} \\ 1 \end{pmatrix}$ と $\begin{pmatrix} \sqrt{2x} \\ \sqrt{y} \end{pmatrix}$ だろう。
右側の $2x+y$ をそのまま使うなら一つのベクトルは $\begin{pmatrix} \sqrt{2x} \\ \sqrt{y} \end{pmatrix}$ である必要があり、もう一つはそれと成分ごとにかけて $\sqrt{x}$ と $\sqrt{y}$ になる必要があるから、 $\begin{pmatrix} \dfrac{1}{\sqrt{2}} \\ 1 \end{pmatrix}$ にならざるを得ない。
コーシー・シュヴァルツの不等式によると $\left(1 + \dfrac{1}{2}\right)(2x+y) \ge (\sqrt{x}+\sqrt{y})^2$ だから、これの平方根をとると $\sqrt{\dfrac{3}{2}}\sqrt{2x+y} \ge \sqrt{x}+\sqrt{y}$ となる。これを見るといかにも $\sqrt{\dfrac{3}{2}}$ が答えになりそうだ。
$k$ の最小値が $\sqrt{\dfrac{3}{2}}$ であることを示すには、問題の命題を $H$ とおいて、 (i) $H \Rightarrow k \ge \sqrt{\dfrac{3}{2}}$ と、 (ii) $k = \sqrt{\dfrac{3}{2}} \Rightarrow H$ の2つを示せば良い。$H$ は $k$ が大きくなると成り立ちやすくなることを考えると、この2つが示せるなら $H \Leftrightarrow k \ge \sqrt{\dfrac{3}{2}}$ も示せるが、答案に書く必要はないだろう。 (i) については、上の議論で等号が成り立つのが $\sqrt{2x} = \dfrac{1}{\sqrt{2}}\sqrt{y}$ のときなので、たとえば $(x,y)=(1,4)$ のときに成り立つ。これを代入すれば示せるだろう。
問題の命題 $\forall x \gt 0\ldotp \forall y\gt 0 \ldotp \sqrt{x}+\sqrt{y} \le k\sqrt{2x+y}$ を $H$ と置く。
$H$ に $x=1, y=4$ を代入すると、 $3 \le k\sqrt{6}$ という論理的帰結が得られる。よって $H$ が成り立つならば $k \ge \dfrac{3}{\sqrt{6}} = \sqrt{\dfrac{3}{2}}$ である。
$x \gt 0, y \gt 0$ を任意にとる。 コーシー・シュヴァルツの不等式を $\begin{pmatrix} \dfrac{1}{\sqrt{2}} \\ 1 \end{pmatrix}$ と $\begin{pmatrix} \sqrt{2x} \\ \sqrt{y} \end{pmatrix}$ に対して適用すると、
\[\left(1 + \dfrac{1}{2}\right)(2x+y) \ge (\sqrt{x}+\sqrt{y})^2\]が成立する。両辺が0以上であることに注意して、これの0以上の平方根をとると $\sqrt{\dfrac{3}{2}}\sqrt{2x+y} \ge \sqrt{x}+\sqrt{y}$ となる。
よって、$k = \sqrt{\dfrac{3}{2}}$ のとき $H$ は成り立つ。
以上 (i)(ii) から、$k$ の最小値は $\sqrt{\dfrac{3}{2}}$ である。
Tweet上のコーシー・シュヴァルツの不等式の等号条件が $4x=y$ だから $k = \sqrt{\dfrac{3}{2}}$ が最小値である、という解説をよく見る。しかしこれは少しギャップがあるだろう。$k = \sqrt{\dfrac{3}{2}}$ で等号が成り立つことがあることから、直ちに $k \lt \sqrt{\dfrac{3}{2}}$ だと矛盾することは言えない。等号条件がわかっているなら、この解答のように代入してしまって $H \Rightarrow k \ge \sqrt{\dfrac{3}{2}}$ を示すのが、答案の作り方としては最適だろう。
追記: 「解説をよく見る」と書いたので調べてみたら、コーシー・シュヴァルツの不等式を使う解法は大体が論理的に抜けがあった。大体が
- $k = \sqrt{\dfrac{3}{2}}$ で成り立ち、等号も成立することがあるからこれが最小
- $\sqrt{x}+\sqrt{y} \le \sqrt{\dfrac{3}{2}}\sqrt{2x+y}$ が成り立つ。元の式と比較して (←これマジで何?) $k \ge \sqrt{\dfrac{3}{2}}$ である。
といった誤りをしている。 正しい解説を挙げるとすれば、 https://www.youtube.com/watch?v=rNPzTx8hI9c は正しかった。 (コーシー・シュヴァルツの不等式を名前を挙げずに自分で示す形で使っている。) また https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q12300137602 も正しかった。